並んでいる注文は消せる、約定した注文は消せない

板に並んでいる注文と、実際に約定した注文は別のもの。いつでも取り消せる数量と、取り消せない記録の違いを整理し、水平線をどちらに引くかまで。

「この値段に大きな売り注文が積まれている」というスクリーンショットが回ってくる。ある一行だけ、数量の桁が周りより一つ多い。ここまで上がったら跳ね返される、という話になる。ところが実際に価格がそこへ近づくと、その注文は消えていて、値段は何事もなく通り過ぎていく。

取引所に出せる注文は、大きく二種類ある。値段を指定して順番待ちの列に並べる注文(指値注文)と、値段を指定せず今すぐ成立させる注文(成行注文)だ。列に並んで待っている注文を値段ごとに集計した一覧を板といい、待っている注文に相手が現れて売買が成立することを約定という(ブートキャンプ第9章)。この二つは、見た目が同じ数字でも中身が違う。

並んでいる数量は、まだ何も起きていない

板に並べた注文は、出した人がいつでも取り消せる。まだ約定していないので、代金も動いていない。だから「この値段に大きな売りが並んでいる」が伝えているのは「この数量を売る意思がある」ではなく、「いま並べてある」までだ。価格が近づいた瞬間に引かれれば、その数量は一度も交換されていない。引いた理由が、気が変わったからなのか、最初から並べるだけのつもりだったのかは、板を見ても分からない。大量の買い注文が並んでいるから下は固い、という読み方も同じことだ。並んでいる間は、まだ誰も買っていない。

約定した注文は逆で、成立したあとから取り消せない。誰かが買い、同じ値段で誰かが売り、その値段で持ち主が入れ替わっている。ローソク足の高値・安値も、出来高(その足の時間内に約定した量)も、この約定だけを記録している。並んでいただけの注文は、消えたあと何も残さない。

線は、交換が起きた跡に引く

だから、板に見えた数量を根拠に水平線を引かない。引くのは、実際に交換が起きた跡が残っている場所だ。過去にそこで向きが変わって高値・安値を作った値段(ブートキャンプ第1章)や、出来高が周りより厚く積み上がった価格帯(ブートキャンプ第3章)を使う。

そのうえで、その値段に届いたときにどうするかを、届く前に一つ決めておく。誰かが「大きな注文が待っている」と言ったから待つのではなく、自分で引いた線に価格が来てから、そこでの動き方を見て判断する。消える可能性のあるものを根拠にしていると、それが消えた時点で、自分が何を待っていたのかを説明できなくなる。

板は「これから起きるかもしれないこと」の一覧で、チャートは「起きたこと」の記録だ。

--- ※ この記事は情報提供および学習を目的としたもので、投資助言・勧誘ではありません。取引の判断はご自身の責任でお願いします。

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