「機関投資家が買っている」という文は、確かめられるか

「機関が買っている」という一行を、主語・時点・観測点で分解する。なぜ確かめられないのか、そして素材として使える文に置き換える手続きまで。

Discordに一行だけ流れてくる。「機関が買っている」。スクリーンショットが一枚付いているが、根拠は書かれていない。それでも、その一行を読んだ後のチャートは、さっきまでと少し違って見える。同じ水平線が、少しだけ強く見える。

この文は、正しいか間違っているかを判定する前に、そもそも確かめられる形をしていない。見るべきはそこだ。

主語・時点・観測点

「機関投資家」は主語として広すぎる。年金と自己勘定のデスクとETFの発行体では、買う理由も、持つ期間も、降りる条件も違う。ひとまとめにした瞬間、その主語からは何も導けなくなる。

次に時点。保有の届出は、米国の13Fなら四半期に一度、期末から45日以内の提出で、公表はそのぶん遅れる。読んだ時点で、それはすでに過去の買いだ。ファンドへの資金流入も、集計されて外に出るまでには時間が要る。オンチェーンで「大口」と呼ばれるアドレスに至っては、それが誰の、何のための残高なのかは推定にすぎない。

そして観測点。板とチャートに映るのは注文であって、注文に名前は書かれていない。OI(ブートキャンプ第11章)で分かるのは、建玉が増えたか減ったかまでだ。分からないものを分かったことにするための言葉が「機関」だ。

もう一つ。約定には必ず両側がいるが、二つの側は対等ではない。一方は成行で当てにいき、もう一方は板に置いた注文のまま受けている。CVD(第6章)が積み上げているのは、成行が買い側と売り側のどちらから出たかの差だ。だから画面から書けるのは、どちらが待てずに当てにいったかまでだ。その先の、誰が、という主語は最後まで出てこない。

三つ通らなければ、素材にしない

流れてきた文を捨てる必要はない。次の三つに置き換えてみる。

- いつの話か — 今日の出来事か、数ヶ月前の記録か - どこで見えるか — 自分の画面のどの数字が動けば、それが起きたと言えるか - 外れたと分かる条件は何か — 何が起これば、この文は間違いだったことになるか

三つ目が答えられない文は、意見ではなく信念だ。信念には無効化ライン(第8章)が引けない。引けないものはプランに入らない。

逆に三つとも答えられるなら、その文はもう「機関が買っている」ではなくなっている。「この価格帯で売りが吸収されているなら、押しでこの帯の下に足が確定しないはずだ」——確かめられる形とは、そういう文のことだ。主語が消えて、場所と条件が残る。

誰が買ったかは分からない。どこで交換が起きたかは、画面に残っている。

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※ この記事は情報提供および学習を目的としたもので、投資助言・勧誘ではありません。取引の判断はご自身の責任でお願いします。

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