フィボは「どこから引くか」で決まる
同じチャートでも、3人が引いたフィボは別物になる。違うのは比率ではなくアンカー。線を引く前に何を言葉にしておけば、外れたときに学べるのか。
同じ日足チャートを3人に渡して、直近の押し目にフィボを引いてもらう。戻ってきた3枚は、目盛りの数字こそ同じなのに、0.618の線がまるで違う場所にある。1人は直近の下落の起点から、1人はもっと前の高値から、1人はヒゲではなく実体で取っている。ツールも設定も同じで、違うのはアンカーだけだ。
比率は定数、アンカーは選択
0.382も0.618も、道具の側にある定数だ。誰が引いても動かない。動くのはアンカー、つまり「どの一波を、いまの相場をつくった波と見なすか」という判断のほうだ。
だからフィボを引く作業は、計算ではなく宣言に近い。この一波が主役だ、と決めている。宣言が外れていれば、比率がどれだけ正確でも、そこで反応する理由がない。効かなかったフィボを見て「フィボは効かない」と言うとき、道具のせいにされているのは、たいてい自分が選んだ主役のほうだ。
引く前に、言葉にする
変えるのは順番だけでいい。線を引く前に、どの波を使うのかを口に出せる形にしておく。「日足の、この安値から高値までの上昇」と言えないなら、その波はまだ自分の中で主役になっていない。ヒゲを使うか実体を使うかも、場面ごとに決めずに先に固定する。都合のいいほうを後から選べる状態にしておくと、フィボはいつも当たっているように見えて、代わりに何も教えてくれなくなる。アンカー取りそのものの手順はブートキャンプ4-3にある。
そして、引いたあとは動かさない。動かしたくなった瞬間が、いちばん情報の多い瞬間だからだ。ただし、動かしたくなる理由は二つに割れる。アンカーに使った波の高値や安値そのものが更新されたなら、主役の波はもう別のものに変わっている。これはチャートに出た事実で、この場合は引き直すのが正しい。線が効かずに含み損が増えたから位置を変えたい、というのはチャートではなく自分の都合だ。都合で動かしたくなったとき、そこに見えているのは「比率が効かなかった」ではなく「主役の選定を間違えた」という一段深い事実で、次に似た形が来たときに使えるのは後者のほうになる。引き直す前に、古い1本が何を示したかを残しておく。残っていなければ、同じ選び方を何度でも繰り返すことになる。
チャートに何本のフィボが載っているかは、腕前を表さない。どの波を主役に選び、それが後から見て妥当だったかを言えるかどうかが表す。フィボは相場の先を映す道具ではなく、自分がいまどの波を見ているのかを、他人にも自分にも見える形にする道具だ。
---
※ この記事は情報提供および学習を目的としたもので、投資助言・勧誘ではありません。取引の判断はご自身の責任でお願いします。
記事の一覧 | トレード用語集 | NoFOMO Club