出来高は方向を持たない

大きな出来高は買いの証拠ではない。取引は必ず両側で成立する。出来高から実際に取り出せる三つの情報と、向きを別の道具から借りる順序。

長い陽線が出て、その足の出来高が周囲より頭ひとつ高い。買いが入った、と読む。自然な読み方に見えるが、その足の中では売った側もまったく同じ量いる。取引は必ず両側で成立するからだ。出来高が数えているのは何枚が持ち主を変えたかであって、買い圧と売り圧の差ではない。

だから出来高そのものに矢印は付いていない。それでも見る価値があるのは、方向以外の三つを教えてくれるからだ。

出来高から取り出せる三つ

一つは関与の量。ある価格帯で大量の枚数が入れ替わったなら、そこで成立した数量が多い。人数や現在の注文量、再訪時の反応確率までは分からない。プロファイルは指定した期間と価格帯の取引量を可視化する。ただし入れ替わった枚数には、新規で入った分も、決済で出た分も混じっている。市場に残っているポジションが増えたのかどうかを数えているのは、出来高ではなくOI(ポジション残高)のほうだ。ただしOIがあるのは先物やパーペチュアルなどの派生市場だけで、現物には存在しない(ブートキャンプ11-2)。現物しか見ていないなら、この区別はそもそも手に入らない。

二つは裏付けの有無。同じ値幅を動いたとしても、薄い出来高で滑った動きと、厚い出来高を伴った動きでは意味が違う。前者はまだ誰も本気で値段を決めていない。後者には少なくとも合意の形跡がある。良し悪しではなく、戻りやすさの見積もりが変わる。

三つは枯れ。過去の出来高が少ない価格帯は観察候補になるが、次回の通過速度や到達、滑りを保証しない。現在の板や流動性とは別に確認する。

向きは、別の道具から借りる

方向が欲しいなら、はじめから符号を持つ道具と組ませるしかない。デルタ系は買い成行と売り成行を分けて積み上げるので向きがある。高値と安値の切り上げ・切り下げという価格構造にも向きがある。出来高の役目は、その向きに重みを付けることだ。順序を逆にして、出来高から向きを読み取ろうとすると、たいてい自分が見たい方向に読める。

実務では、目立つ出来高を見つけたときに三つ問う。どこで出たか(レンジの端か真ん中か、節目の上か下か)。何の後か(長く伸びた末尾か、動き出しか)。そして価格はその後どうしたか(そこに留まったか、丸ごと戻したか)。

三つ目がいちばん重い。大きな出来高が出た価格帯を、その後の価格が拒んだのなら、そこで入った側は動けなくなっている。彼らが降りる場所が、次の値動きの目的地になりやすい。

出来高は、どちらが勝ったかの記録ではない。選択した期間・価格帯で、どれだけの数量が取引されたかの記録だ。


※ この記事は情報提供および学習を目的としたもので、投資助言・勧誘ではありません。取引の判断はご自身の責任でお願いします。

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